口ゴボとは
口元が全体的に前方に突出した状態を指す「口ゴボ」は、日本人によく見られる症状です。特徴的な顔貌を呈するため、口元のコンプレックスになりやすく、矯正による治療を希望される方が多くなっています。口ゴボであるかどうかは、Eラインを見ることで簡単にチェックできます。
口ゴボのセルフチェック
Eラインは横顔の美しさの指標となる線で、正確にはエステティックラインと言います。鼻の先端と下顎の先端(オトガイ)を1本の線で結んだ時に、口唇がEラインの外側に出ていたら、口ゴボです。日本人は口唇がEラインのやや内側に位置している状態が理想的と言われています。
口ゴボになる原因
口ゴボの主な原因は生まれ持った骨格に対して大きすぎる歯列が原因で、結果として唇が前方に押し出され、口を閉じても口元がモコっと膨らんで見えます。口を閉じる際に無理な力が入りオトガイ部の筋肉が硬直して梅干し状にしわが寄ります。こうした歯列不正を誘発するのは、先天的な要因と後天的な要因の2つに分けられます。
口ゴボの先天的な要因
口ゴボは、先天的に欧米人と比べ小さい頭蓋骨と顎骨の中に、欧米人と同じサイズの歯が生えてきてしまい、あごの骨に収まりきらないことが原因の一つです。
口ゴボの後天的な要因
口ゴボの後天的な要因は「習慣」です。前述の先天的な要因に加え口呼吸、指しゃぶり、舌を前に突き出す癖、やわらかいものばかり好んで食べる習慣などによって、口唇閉鎖不全(お口ポカン)が起き、前歯が前方に飛び出てきて口ゴボの症状が現れます。
※もし仮に先天的に小さな顎骨に大きな歯が出てきて口唇閉鎖不全をしなかったとしたら、前歯が引っ込む代わりに歯列の凸凹が起きてしまい、叢生歯列という違う不正咬合が現れます。
口ゴボを治療するメリット

- 口元のコンプレックスを解消できる
- 歯磨きしやすくなる
- 口を閉じやすくなる
- 噛み合わせが良くなる
- 顎関節への負担を減らせる
口ゴボの方の多くは、歯並び・噛み合わせの異常を伴うため、歯磨きしにくい、口を閉じにくい、上下の歯が適切な位置で噛み合わないなどの症状に悩まされます。矯正によって口ゴボを治療すれば、口元のコンプレックスを取り除けるだけでなく、そうした歯並び・噛み合わせの異常に由来する症状も解消できます。
口ゴボを放置するリスク
ものごとに消極的になる
口ゴボがコンプレックスになっていると、「口元を見られたくない」「人前に出るのが恥ずかしい」といった意識が働き、行動だけでなく性格まで消極的になってしまう場合があります。
虫歯や歯周病になりやすい
出っ歯が原因で口ゴボになっている場合は、歯磨きしにくいことから口内環境が悪くなりがちです。口呼吸を伴う場合は、口腔乾燥が加わるため、細菌の活動がより一層高まります。その結果、虫歯や歯周病リスクが顕著に増加するのです。
食べ物を効率良く噛めない
出っ歯などの歯並びの異常には、必ずと言って良いほど噛み合わせの異常も伴います。上下の歯が適切な位置で噛まないと、食べ物を効率よく咀嚼(そしゃく)できません。また、歯列の一部や顎関節に過剰な負担がかかることで、歯の摩耗や破折、顎関節症のリスクも上昇します。
口ゴボ向けの矯正治療
口ゴボの原因は顎骨の大きさと歯列の大きさの不調和によるものです。いくらお口を閉じるトレーニングをしても大きな歯列は小さくなりません。そのためお顔のレントゲンであるセファログラム診断をし、骨格に合わせた歯列にするために多くの場合は小臼歯の抜歯を伴う歯列矯正になります。

ワイヤー矯正
1本1本の歯にブラケットを装着して、金属製のワイヤーを通す治療法です。最も標準的な矯正法であり抜歯症例にも対応しているため、口ゴボを治す際にも有効です。ワイヤー矯正なら症状が重たい口ゴボにも適応できます。

マウスピース矯正
透明な樹脂製のマウスピースを装着する治療法です。装置が目立たず、着脱も可能であることから近年人気が高まっています。しかし抜歯を伴う矯正治療には向いておらず、適応の幅はワイヤー矯正ほど広くはありません。
中等度から重度の口ゴボでマウスピース矯正を希望される場合は、ワイヤー矯正もしくはワイヤー矯正とのマウスピース矯正のコンビネーション治療を提案させていただくこともあります。
よくある質問
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Q
口ゴボの見分け方を教えてください
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A
口ゴボはEラインで見分けることができます。鼻の先と顎の先を結んだ線をE(エステティック)ラインと呼び、横顔の美しさの指標となります。鏡でご自身の横顔を観察し、口元がEラインよりも外側に出ている場合は、口ゴボである可能性が高いです。
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Q
歯並びは良いけど口ゴボは治した方がいいですか?
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A
噛み合わせや見た目が悪い場合は、治しても良いといえます。歯というのは、単に美しく並んでいれば良いというものではありません。上下の歯列が正しい位置で噛むことで、歯が持つ本来の機能を発揮できるからです。また、口ゴボの症状が深刻なコンプレックスになっていたり、呼吸や発音に悪影響が及んでいたりする場合も歯列矯正を受けた方が良いといえるでしょう。
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Q
口ゴボを自力で治すことはできますか?
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A
口ゴボを自力で治すことはできません。歯並び・噛み合わせの異常は、基本的に矯正治療でなければ改善できないのです。前方に出ている前歯を自力で引っ込めようとすると、歯が折れたり、歯茎に炎症をもたらしたりするなどのトラブルを招きます。
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Q
口ゴボの矯正は普通の矯正より費用が高いですか?
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A
口ゴボだから費用が高くなるということはありません。矯正の費用は、歯並びの重症度や選択する矯正法の種類などによって決まるものなので、受け口や乱ぐい歯よりも口ゴボの矯正の方が高くなるということはないといえます。
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Q
口ゴボを治したら、後戻りしないですか?
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A
保定処置を受けることで後戻りを防止できます。口ゴボを治した後にリテーナーと呼ばれる保定装置を装着して、歯をその位置に固定します。保定にかかる期間は、歯を動かす治療(=動的治療)と同程度なので、数年を要するのが一般的です。少し長い道のりになりますが、口ゴボを元に戻さないためにも、保定処置は最後までやり遂げましょう。